2020.01.03

理事・浜畑賢吉より、ご協力のお願い

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先年鬼籍に入られた劇団四季の浅利慶太氏は22歳の時、慶応大学の三田文学に「演劇の回復のために」を投稿しました。それまでの新劇が歩んできた左翼的リアリズム運動を痛烈に批判し、「演劇的機能の本質はカタルシスにある」と断じたアリストテレスを引き合いに、新古典主義演劇を標榜して行きました。
 そして日生劇場の開設に浅利氏が携わったことから、劇団四季は日本生命という大きなスポンサーと結びつくことになり、それと平行して劇団員全員でチケットを売る動員活動が実を結び、大きな劇団に発展して行ったのです。同時に東宝や松竹などの興行会社が、映画界のスターを使った舞台を盛んに制作して、これもまた大成功を収めていました。時に新劇は舞台の公演はほぼ赤字でしたが、映画やテレビドラマの出演で何とか持ち堪えておりました。
 ところが時代の波は移り変わります。映画産業が斜陽になり、テレビドラマも急に勢いが薄れてしまうと新劇の力も衰退し、それに輪をかけてミュージカルブームの波に飲み込まれて悪戦苦闘の状況となりました。映画スターを失った興行会社も舞台製作をどんどん減らして行きました。皮肉なことに、ミュージカルブームの旗振り役をしてきた劇団四季の演劇部門の活動もその波に飲み込まれようとしています。
 そうした現象は、演劇人が昔と同じように必死の努力をすることで乗り越えられないことはなかった筈です。ところがそこに本を読まない子供たちという怪物的な社会現象が襲い掛かって来ました。彼らが将来知的な喜びを演劇に求めて劇場にやって来るとはとても思えません。子供達から唱歌という日本語の粋を奪ってしまった教育の大失敗も間違いなく将来に禍根を残すでしょう。責められるべきは書に接しない子供達ではなく、そう仕向けた我々大人たちなのです。
 母親が赤子に語り掛けた言葉が知の萌芽となり、やがて人間の心に結実するように、文化や芸術の源泉は民族が守り育てて来た「言の葉」にあります。その復活を教育界に求めても枯渇した泉は再生不能で、知という萌芽を生み出す力もありません。
 そこで私たちは演劇を通じて文化の復興を目指すことを考えました。対象は子供達です。権力、名誉、財力に溺れた大人にそれを求めることは出来ませんし、学校教育にもその夢を託せないなら、子供たちが宝物のような日本語に接する機会を演劇界が創生したいのです。子供たちの知の源泉を掘り出すべく、無料で演劇を提供することを目指します。
 私たちは認定NPO法人の資格を得ました。皆様のお力を頂くことで、素晴らしい先人達から頂いた知の萌芽を子供たちと共有して参ります。それが曲がり角に来た演劇界の復興にも繋がると信じております。どうぞお力を!

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